高血圧
高血圧
高血圧は、診察室で測定された収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合を指します。自宅で測定する家庭血圧では、135/85mmHg以上が高血圧と定義されます。血圧の目標値は年齢や健康状態により異なりますが、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」が基準として広く使用されています。特に高齢者に多く見られる疾患であり、人口の高齢化に伴い、高血圧患者数の増加が今後も予想されます。
高血圧は、その原因により本態性高血圧と二次性高血圧の2種類に分類されます。
本態性高血圧は、大部分の高血圧患者が該当し、明確な原因は解明されていませんが、塩分の過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、喫煙、加齢、遺伝的要因といった生活習慣や環境要因がリスク因子として関連しています。これらの要因が組み合わさることで、血圧が徐々に上昇し、高血圧を引き起こすと考えられています。
二次性高血圧は、特定の病気や状態が原因で発生する高血圧です。主な原因には、腎臓疾患(腎性高血圧)があり、次いで内分泌系やホルモンの異常(内分泌性高血圧)が挙げられます。例えば、原発性アルドステロン症やクッシング症候群がこれに該当します。また、睡眠時無呼吸症候群、遺伝性高血圧、薬剤誘発性高血圧なども二次性高血圧の原因となることがあります。
以下の項目に当てはまる方は、高血圧のリスクが高い可能性があります。
以下の項目に当てはまる方は、高血圧のリスクが高い可能性があります。自身の生活習慣を見直し、リスクの軽減に努めることが重要です。
野菜にはカリウムが多く含まれており、カリウムは体内のナトリウム(塩分)を排出する作用があります。野菜を摂取しないことで、カリウム不足となり、結果的に塩分が体内に残りやすくなり、血圧が上がるリスクが高まります。特に緑黄色野菜や根菜類を積極的に摂取することが推奨されます。
喫煙は、血管を収縮させ血圧を上昇させるニコチンを含んでおり、継続的な喫煙は高血圧のリスクを高めます。また、喫煙は動脈硬化の原因ともなり、心血管疾患の発症リスクを著しく増加させます。喫煙をやめることで、これらのリスクを大幅に減らすことができます。
アルコールは少量であれば血圧に大きな影響を与えませんが、過度な摂取は血圧を上昇させる原因となります。特に長期間にわたる大量飲酒は、高血圧だけでなく、肝疾患やその他の健康問題を引き起こす可能性があります。アルコール摂取量を適度に抑えることが、血圧管理には欠かせません。
食塩の摂取量が多いと、血液中のナトリウム濃度が上昇し、これが原因で血圧が上昇します。日本人はもともと塩分を多く摂取しがちであり、特に醤油や味噌、漬物などの塩辛い食品が多くの家庭で常食されています。塩分を控えめにするためには、食事に使う調味料を減らすこと、または減塩タイプの調味料を選ぶことが推奨されます。
肥満は、高血圧の最大のリスク要因の一つです。体重が増えると血液量も増加し、心臓にかかる負担が大きくなります。さらに、内臓脂肪が多いと、インスリン抵抗性が増し、血圧を上昇させるホルモンが分泌されるため、肥満は高血圧の原因となりやすいです。適正体重を維持することは、高血圧予防において非常に重要です。
運動不足は、高血圧のリスクを高めるだけでなく、心肺機能の低下や肥満につながりやすくなります。有酸素運動は血液循環を改善し、血管の健康を保つために重要です。日常的に体を動かす習慣を身につけ、週に少なくとも150分程度の適度な運動を目指しましょう。
長期間にわたる慢性的なストレスは、自律神経系に影響を与え、血圧を上昇させます。ストレスを感じると交感神経が刺激され、アドレナリンなどのホルモンが分泌され、これが心拍数や血圧を上げる原因となります。ストレス管理には、趣味やリラクゼーション、適度な運動など、心身をリラックスさせる方法が効果的です。
睡眠不足は、血圧を調整するホルモンバランスを崩し、高血圧の原因となります。特に睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害がある場合、夜間の血圧が高くなることがあります。質の良い睡眠を確保するためには、規則正しい生活習慣や睡眠環境の改善が必要です。
食事や睡眠のリズムが不規則な生活は、血圧の変動を大きくし、高血圧のリスクを増加させます。特に夜勤や不規則な労働時間が続く場合、体内時計が乱れ、自律神経のバランスが崩れることが多いです。規則正しい生活リズムを保つことが、健康的な血圧管理には欠かせません。
これらのリスク因子に心当たりがある方は、早めの受診をお勧めいたします。
高血圧の診断には、診察室での血圧測定と家庭での血圧測定があり、後者の診察室外血圧が優先される場合もあります。特に、若年層や中高年層で急激に発症した場合や、降圧薬を使用しても血圧が下がらない場合には、二次性高血圧の可能性が疑われます。主な検査としては、尿検査、血液検査、各種ホルモンの測定、クレアチニンや電解質の検査、血糖値の測定、腹部の超音波検査やCT検査などが行われます。
これらの検査を通じて、原因となる疾患を特定し、適切な治療方針を立てることが重要です。
血圧の治療は、心血管疾患や脳卒中などの合併症を予防することを目的として、生活習慣の改善と薬物療法の2つの方法で行われます。
生活習慣の改善は、高血圧の予防と治療の基本となります。以下のような対策が推奨されます。
食塩の摂取量を減らすことで、血圧の低下が期待されます。日本人の平均的な塩分摂取量は1日10g以上であり、目標である6g未満に抑えるためには、外食や加工食品を控え、家庭での調理においても塩分を少なくする工夫が必要です。塩分を控えた食事を続けることで、徐々に味覚が変わり、薄味でも満足できるようになります。
野菜や果物には、血圧を下げる効果が期待できるカリウムや食物繊維が豊富に含まれています。また、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を制限することで、動脈硬化の進行を防ぎ、血圧のコントロールがしやすくなります。ただし、腎障害や糖尿病のある方は、医師と相談しながら食事内容を調整することが重要です。
体重を適正に保つことは、血圧の管理において非常に重要です。体重が増えると血液量が増加し、心臓や血管にかかる負担が大きくなります。適切なカロリー摂取と定期的な運動を心がけ、理想的な体重を維持することが求められます。BMI(体格指数)25未満が理想とされています。
有酸素運動は、血液循環を改善し、心肺機能を向上させます。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、スイミングなど、自分が続けやすい運動を日常的に取り入れることが大切です。運動を習慣化することで、血圧の低下だけでなく、ストレスの軽減や体重管理にも効果があります。
アルコールの過度な摂取は血圧を上昇させる原因となります。
喫煙は血管を収縮させるため、血圧を上昇させる大きな要因となります。さらに、タバコに含まれる有害物質は、動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めます。
生活習慣の改善のみでは血圧が十分に下がらない場合、薬物療法が行われます。降圧薬には、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬などがあり、これらを組み合わせて個々の患者に最適な治療プランが作成されます。
二次性高血圧の場合、原因となる疾患を治療することで血圧の正常化が期待されます。例えば、内分泌性高血圧の場合、副腎にできた腫瘍が原因でホルモンが過剰に分泌されることがあります。この場合、腫瘍を外科手術で除去することで高血圧が改善する可能性があります。また、腎動脈の狭窄による腎血管性高血圧の場合、カテーテルを用いた血管形成術により、腎臓への血流が改善され、結果的に血圧が低下することがあります。
高血圧は、早期の発見と生活習慣の改善によって予防可能な疾患です。日常的に血圧を測定し、血圧の変動を把握することが重要です。
特に、家族に高血圧の既往がある場合や、生活習慣病のリスクが高い方は、定期的な医療機関でのチェックを受けることが推奨されます。早期の予防と管理が、将来的な心血管疾患のリスクを低減し、健康寿命の延伸につながると考えられます。
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