2026年6月29日
「家族に大きないびきを指摘される」「しっかり寝たはずなのに日中眠くてたまらない」——そんな方は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れているかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まることを繰り返す病気で、放置すると高血圧や心臓の病気などのリスクを高めることがわかっています。一方で、検査で見つけて適切に治療すれば、症状の改善が期待できる病気でもあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か、種類や重症度、放置するリスク、検査の方法、CPAPをはじめとする治療、生活上の工夫まで、できるだけくわしく解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が止まったり(無呼吸)、浅くなったり(低呼吸)することを繰り返す病気です。一般に、10秒以上の呼吸停止が一晩に何度も起こる状態を指します。
呼吸が止まるたびに体は酸素不足になり、それを補おうとして脳が短く目を覚まします。本人は気づいていなくても、睡眠が何度も中断されているため、ぐっすり眠ったつもりでも睡眠の質が大きく低下し、さまざまな不調につながります。睡眠時間は足りているのに疲れがとれない、という方の背景に、この病気が隠れていることがあります。
睡眠時無呼吸症候群の種類
睡眠時無呼吸症候群には、主に2つのタイプがあります。
閉塞性(へいそくせい)睡眠時無呼吸 最も多いタイプで、のどの奥の空気の通り道(気道)が、睡眠中にふさがってしまうことで起こります。眠ると舌やのどの筋肉がゆるみ、気道が狭くなります。とくに、もともと気道が狭い方や、首まわりに脂肪がついている方では、気道が塞がりやすくなります。いびきは、狭くなった気道を空気が通るときに出る音です。
中枢性(ちゅうすうせい)睡眠時無呼吸 脳から「呼吸をしなさい」という指令がうまく出なくなることで起こるタイプです。心臓の病気などに関連して起こることがあります。閉塞性に比べると頻度は少なめです。
どちらのタイプか、また両方が混在しているかによって、対応が異なる場合があります。
気道が塞がる仕組み
閉塞性睡眠時無呼吸では、なぜ気道が塞がるのでしょうか。
起きているときは、のどの筋肉が働いて気道を開いた状態に保っています。しかし、眠ると筋肉がゆるみ、舌の付け根やのどの組織が落ち込んで、気道が狭くなります。もともと気道が狭い・あごが小さい・扁桃が大きい・首まわりに脂肪が多いといった条件があると、気道はさらに塞がりやすくなります。
気道が完全に塞がると「無呼吸」、部分的に狭くなると「低呼吸」やいびきになります。塞がるたびに酸素が不足し、脳が目を覚まして呼吸を再開させる——これを一晩に何度も繰り返すことで、睡眠が細切れになり、体に大きな負担がかかります。
重症度について
睡眠時無呼吸症候群の重症度は、1時間あたりに無呼吸や低呼吸が何回起こるか(無呼吸低呼吸指数)で評価されます。
一般的な目安として、1時間あたりの回数が、おおむね5〜15回で軽症、15〜30回で中等症、30回以上で重症とされます。回数が多いほど、睡眠の質の低下や体への負担が大きくなり、治療の必要性も高まります。
ただし、回数だけでなく、日中の眠気などの症状や、高血圧などの合併する病気の有無も含めて、総合的に治療方針を判断します。
こんなサインに注意
次のような症状やサインがある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠中のサイン(家族に指摘されることが多い)
- 大きないびきをかく
- いびきが急に止まり、しばらくして「ガッ」と再開する
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
- 寝相が悪い、寝汗をかく
日中・起床時のサイン
- 日中に強い眠気がある(会議中・運転中・テレビを見ているときなどに眠くなる)
- 起床時に頭痛がする、口やのどが渇いている
- 朝すっきり起きられない、熟睡感がない
- 集中力・記憶力が低下したと感じる
- 強い疲労感が抜けない
夜間のサイン
- 夜中に何度もトイレに起きる
自分では気づきにくく、家族の指摘や、日中の眠気をきっかけに受診につながることが多い病気です。とくに、いびきが止まって静かになった後に大きく呼吸が再開するパターンは、無呼吸のサインのことがあります。
放置するとどうなるのか
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、睡眠中に繰り返し起こる酸素不足と、睡眠の質の低下によって、体にさまざまな負担がかかります。
生活習慣病・血管の病気のリスク上昇 酸素不足のたびに体は緊張状態になり、血圧が上がりやすくなります。その結果、高血圧、心臓病(心筋梗塞・不整脈・心不全)、脳卒中、糖尿病などのリスクが高まることがわかっています。とくに、薬を飲んでもなかなか下がらない高血圧の背景に、睡眠時無呼吸が隠れていることがあります。
日中の眠気による事故のリスク 強い眠気は、車の運転中の事故や、仕事中のミスにつながることがあります。安全のうえでも見逃せない問題です。
生活の質への影響 慢性的な眠気や疲労は、集中力の低下や気分の落ち込みにもつながり、日々の生活の質を下げてしまいます。
このように、睡眠時無呼吸症候群は「いびき」や「眠気」だけの問題ではなく、全身の健康に関わる病気です。
なりやすい人
- 肥満傾向のある方(首まわりに脂肪がつくと気道が狭くなりやすい)
- 首が短い・太い方
- あごが小さい、後退している方
- 扁桃(へんとう)が大きい方、鼻づまりがある方
- 男性、および閉経後の女性
- 寝る前にお酒を飲む習慣のある方(筋肉がゆるみ気道が塞がりやすくなる)
やせている方でも、あごの形や骨格によって発症することがあります。「太っていないから大丈夫」とは限りません。日本人は、骨格的にあごが小さい方も多く、肥満がなくても発症することがあるとされています。
検査について
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは簡易検査を行うことが一般的です。
簡易検査 ご自宅で、指や鼻などに小型のセンサーを装着して一晩眠り、睡眠中の呼吸の状態や、血液中の酸素の値などを測定します。入院せず、普段どおりの環境で測れるのが特徴です。この結果から、無呼吸や低呼吸が1時間あたり何回起きているか(重症度の目安)を調べます。
精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査) 簡易検査だけでは判断が難しい場合などに行う、さらに詳しい検査です。脳波や眼の動き、筋肉の動きなども含めて、睡眠の状態を細かく調べます。施設によっては入院して行います。
検査の結果、重症度や症状に応じて、治療方針を決めていきます。
※当院で対応している検査の方法については、【実際の対応に合わせて記載してください】。気になる症状がある方は、まずご相談ください。
CPAP(シーパップ)治療とは
検査の結果、治療が必要と判断された場合、最も標準的な治療がCPAP(持続陽圧呼吸療法)です。
CPAPは、睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、その圧力で気道が塞がらないように保つ治療法です。空気の力で気道を内側から広げておくことで、睡眠中の無呼吸やいびきを防ぎ、睡眠の質を改善します。多くの方で、日中の眠気や起床時の頭痛などの症状の改善が期待できます。
CPAPの実際
CPAPは、鼻にあてるマスクと、空気を送る装置からできています。マストにはいくつかの種類があり、顔の形や好みに合わせて選べます。最初は装着に違和感を覚えることもありますが、マスクの種類を変えたり、空気の圧を調整したりすることで、より快適に使えるよう工夫できます。
CPAPは、続けて使ってこそ効果が得られる治療です。健康保険でCPAP治療を行う場合は、定期的な通院(おおむね月1回程度)が必要になり、使用状況を確認しながら治療を続けます。装置はレンタルで利用するのが一般的です。
CPAPを続けるためのコツ
- マスクが合わないと感じたら、我慢せず種類の変更を相談する
- 鼻づまりがある場合は、その治療もあわせて行う
- 空気の乾燥が気になる場合は、加湿の機能を活用する
- 旅行や出張の際も、持ち運んで使えるよう相談しておく
当院では、装置の調整や使用状況の確認を行いながら、無理なく続けられるようサポートします。困ったことがあれば、遠慮なくご相談ください。
CPAP以外の対策・治療
症状の程度や原因によっては、次のような方法も組み合わせます。
生活習慣の改善
- 減量:肥満が背景にある場合、体重を減らすことで症状が改善することがあります。とくに首まわりの脂肪が減ると、気道が広がりやすくなります。
- 寝る前の飲酒を控える:アルコールは筋肉をゆるめ、気道を塞がりやすくします。
- 横向きで寝る:あお向けは舌が落ち込みやすいため、横向きで寝ると改善することがあります。
- 鼻づまりの治療:鼻が詰まっていると口呼吸になり、症状が悪化しやすくなります。
- 禁煙:喫煙は気道の炎症やむくみの原因になります。
マウスピース(口腔内装置) 軽症〜中等症の場合などに、下あごを少し前に出して気道を広げるマウスピースを使うことがあります。装置の作製は歯科で行われます。持ち運びしやすく、CPAPが合わない方の選択肢になることもあります。
手術 扁桃が大きい、鼻の通りが悪いなど、原因によっては手術が検討されることもあります。どの治療が適しているかは、検査の結果や原因によって異なります。
こんな方はご相談を
- いびきが大きいと家族に言われる
- 日中の眠気が強く、仕事や運転に支障がある
- 朝、頭痛がする・すっきり起きられない
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
- 高血圧があり、薬を飲んでもなかなか下がらない
これらに当てはまる方は、一度ご相談ください。
睡眠時無呼吸のセルフチェック
日中の眠気の程度をふり返ってみましょう。次のような場面で、つい眠ってしまう、または強い眠気を感じることがありますか。
- 座って本や書類、スマートフォンを見ているとき
- テレビを見ているとき
- 会議中や、映画館など静かな場所でじっとしているとき
- 昼食後、静かに座っているとき
- 車の運転中、信号待ちなどで止まったとき
これらの場面で強い眠気を感じることが多い場合、夜の睡眠の質が低下しているサインかもしれません。とくに運転中の眠気は事故につながり危険なため、早めにご相談ください。なお、これは目安であり、診断ではありません。気になる場合は検査で確認することが大切です。
受診から治療までの流れ
受診から治療までは、おおむね次のように進みます。
- 受診・問診:いびきや日中の眠気など、気になる症状をうかがいます。
- 簡易検査:ご自宅で一晩、小型の機器をつけて、睡眠中の呼吸や酸素の状態を測定します。
- 結果の説明・診断:重症度を確認し、必要に応じて精密検査を検討します。
- 治療の開始:重症度や原因に応じて、CPAP・マウスピース・生活改善などを行います。
- 定期的な通院:CPAPの場合は、使用状況を確認しながら治療を続けます。
気軽に受けられる簡易検査から始められるため、「いびきや眠気が気になるけれど、大げさにはしたくない」という方も、まずはご相談ください。
子どもの睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸は、大人だけでなく子どもにも起こります。子どもの場合は、扁桃やアデノイド(鼻の奥のリンパ組織)が大きいことが主な原因になることが多いとされています。
いびきをかく、寝ているときに呼吸が苦しそう、口を開けて寝ている、寝相が悪い、おねしょが続く、日中に落ち着きがない・集中できないといったサインがみられることがあります。子どもの睡眠時無呼吸は、成長や日中の様子に影響することもあるため、気になる場合は小児科や耳鼻科に相談しましょう。
治療によって期待できること
睡眠時無呼吸を適切に治療すると、睡眠の質が改善し、日中の強い眠気や起床時の頭痛などの症状が軽くなることが期待できます。また、高血圧など、合併する病気の管理がしやすくなる面もあります。
睡眠がしっかりとれるようになることで、日中の集中力や気分にもよい影響が期待できます。治療は続けることが大切なので、無理なく続けられる方法を一緒に見つけていきましょう。
睡眠時無呼吸と高血圧・糖尿病の関係
睡眠時無呼吸は、高血圧や糖尿病と深く関わっています。睡眠中に酸素が不足する状態が繰り返されると、血圧が上がりやすくなり、血糖の管理にも影響することがわかっています。
逆に、睡眠時無呼吸をきちんと治療することで、血圧が下がりやすくなったり、生活習慣病の管理がしやすくなったりすることもあります。すでに高血圧や糖尿病で治療を受けている方で、いびきや日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸が隠れていないか、一度確認してみる価値があります。
よい睡眠のための生活習慣
睡眠時無呼吸の治療とあわせて、日ごろから質のよい睡眠を心がけることも大切です。
- 毎日できるだけ同じ時間に寝起きし、睡眠リズムを整える
- 寝る前のアルコールやカフェインを控える
- 寝る前のスマートフォン・パソコンの使用を控え、強い光を避ける
- 寝室を暗く静かに保ち、快適な室温にする
- 日中に適度に体を動かす
これらは「睡眠衛生」と呼ばれ、睡眠の質を高める基本です。とくにアルコールは、寝つきをよくするように感じても、夜中に目が覚めやすくなり、気道もゆるんで無呼吸を悪化させるため、就寝前の深酒は避けましょう。
CPAPを始めるか迷っている方へ
「CPAPは大げさではないか」「一生続けるのは負担だ」と感じて、治療をためらう方もいます。しかし、睡眠時無呼吸を放置すると、日中の眠気だけでなく、高血圧や心臓の病気のリスクが高まっていきます。
まずは、自宅でできる簡易検査で「自分の状態を知る」ことから始められます。検査の結果によっては、CPAP以外の方法(マウスピースや生活改善)が選べることもあります。いきなり治療を決めるのではなく、まず現状を確認するつもりでご相談いただければと思います。気になる症状を我慢して過ごすより、一度調べてみることで、かえって安心につながることもあります。
当院での対応について
新高円寺クリニック(東京都杉並区・新高円寺駅徒歩2分)では、睡眠時無呼吸症候群の検査とCPAP治療に対応しています。また、内科として、関連する高血圧や生活習慣病もあわせて管理できることが当院の強みです。検査から治療、その後の継続的なサポートまで、一か所で対応できます。
「いびきや日中の眠気が気になる」「家族にすすめられた」「高血圧がなかなか改善しない」といった方も、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. CPAPは一生続けないといけないのですか? A. 原因によって異なります。減量などで症状が改善すれば、治療が変わることもあります。一方で、骨格などが原因の場合は、継続が必要なこともあります。まずは検査で状態を確認しましょう。
Q. 検査や治療に保険は使えますか? A. 医師が必要と判断した検査や、一定の基準を満たしたCPAP治療には健康保険が適用されます。詳しくはお問い合わせください。
Q. やせれば治りますか? A. 肥満が主な原因の場合、減量で症状が改善することがあります。ただし、骨格など他の要因もあるため、減量だけで十分かどうかは検査で確認が必要です。
Q. 市販のいびき対策グッズは効果がありますか? A. 一時的に気になる症状をやわらげるものもありますが、睡眠時無呼吸症候群そのものの治療にはなりません。いびきや無呼吸が気になる場合は、まず検査で原因を確認することが大切です。
Q. 家族にできることはありますか? A. いびきや呼吸の止まりに気づいたら、本人に伝えて受診をすすめることが、早期発見につながります。日中の強い眠気にも気を配ってあげてください。
Q. 日中の強い眠気は、運転に影響しませんか? A. 強い眠気は運転中の事故につながるおそれがあり、安全のうえでも治療が大切です。適切に治療して症状を抑えることが重要です。眠気が強い場合は無理に運転せず、医師にご相談ください。
Q. いびきがあるだけでも受診したほうがよいですか? A. いびきは気道が狭くなっているサインのことがあります。とくに日中の眠気を伴う場合は、一度検査を受けることをおすすめします。
まとめ
- 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まることを繰り返す病気
- 大きないびき・日中の強い眠気・起床時の頭痛などがサイン
- 重症度は1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数で評価される
- 放置すると高血圧・心臓病・脳卒中・糖尿病などのリスクが上がる
- 自宅でできる簡易検査で調べることができる
- 治療の中心はCPAPで、続けることで睡眠の質の改善が期待できる
- 減量・横向き寝・マウスピースなど、他の対策を組み合わせることもある
いびきや日中の眠気が気になる方は、お気軽にご相談ください。
診療科目:内科・外科・整形外科・消化器科・呼吸器科・アレルギー科・性感染症内科・往診・在宅医療 所在地:〒166-0003 東京都杉並区高円寺南2丁目11−3 麻吉ビル2F(新高円寺駅2番出口より徒歩2分) 電話:03-5377-5388 ご予約:WEB予約・LINEからも承っています