2026年6月13日
「しっかり寝ているはずなのに疲れがとれない」「朝起きてもだるい」「以前より体力が落ちた気がする」——そんな慢性的な疲労感に悩んでいませんか?
疲れは誰もが経験する身近な症状ですが、休んでも改善しない疲労感の背景には、何らかの病気が隠れていることがあります。「気のせい」「年齢のせい」と片付けず、一度医療機関で原因を調べることが大切です。
こんな疲労感は注意が必要
以下のような状態が続いている場合、医療機関での評価を検討しましょう。
- 十分睡眠をとっても朝から疲れている
- 週末に休んでも疲労が抜けない
- 以前と同じ作業量なのに疲れやすくなった
- 集中力が続かない、頭がぼんやりする
- やる気が出ない、何をしても楽しめない
- 体重の変化(増加・減少)を伴う
- 動悸・息切れ・めまいを伴う
「ただの疲れ」と思っていても、6ヶ月以上続く慢性的な疲労には病気が隠れていることがあります。
仕事で疲れがとれない主な原因
1. 睡眠の問題
最も多い原因の一つです。睡眠時間が足りないだけでなく、睡眠の質が問題になっていることもあります。
特に注意したいのが**睡眠時無呼吸症候群(SAS)**です。いびきが大きい、眠っている間に呼吸が止まると指摘された、日中に強い眠気がある、といった方に多く見られます。放置すると高血圧・心臓病・脳卒中のリスクが高まることがわかっています。
2. 貧血
特に女性に多い原因です。鉄分不足による鉄欠乏性貧血では、疲労感・息切れ・動悸・めまい・冷え・髪のパサつきなどが現れます。月経のある女性、ダイエット中の方、ベジタリアンの方に多く見られます。
男性や閉経後の女性で貧血がある場合、消化管からの出血(胃潰瘍・大腸ポリープなど)が原因のことがあり、より詳しい検査が必要です。
3. 甲状腺の異常
のどぼとけの下にある甲状腺は、全身の代謝をコントロールするホルモンを分泌しています。
甲状腺機能低下症(橋本病など):代謝が落ち、疲労感・むくみ・体重増加・寒がり・便秘などが現れる
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):代謝が上がりすぎ、動悸・体重減少・発汗過多・手の震え・疲労感が現れる
血液検査で簡単に調べることができ、適切な治療で改善が期待できる病気です。
4. 糖尿病・血糖の異常
血糖コントロールが乱れると、強い疲労感・のどの渇き・多尿・体重減少などが現れることがあります。特に食後に強い眠気・だるさを感じる場合は、血糖値の乱高下が関係していることもあります。
5. 肝機能・腎機能の低下
肝臓や腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物がたまり疲労感の原因になります。肝機能異常については別記事「[健診で『肝機能要注意』と言われたら]」もご参照ください。
6. 心臓・呼吸器の病気
心不全・狭心症・慢性閉塞性肺疾患(COPD)などでも、息切れ・疲労感・動悸が現れます。階段の上り下りで以前より息切れする、横になると息苦しい、といった症状がある場合は早めに受診しましょう。
7. ビタミン・ミネラル不足
ビタミンB群・ビタミンD・鉄分・亜鉛などの不足は疲労感の原因になります。偏った食生活、過度なダイエット、外食中心の生活で起こりやすくなります。
8. うつ病・適応障害などのメンタル不調
身体の検査で異常がない場合、うつ病・適応障害・自律神経の乱れが原因のこともあります。「眠れない」「食欲がない」「興味がわかない」といった症状を伴う場合は、心療内科・精神科への相談も検討します。
9. 慢性疲労症候群
6ヶ月以上続く強い疲労感で、他の病気では説明できない場合に診断される病気です。診断には専門的な評価が必要です。
10. 生活習慣・働き方の問題
長時間労働・夜勤・不規則な生活・運動不足・栄養の偏り・ストレスといった生活習慣自体が、慢性疲労の大きな原因になります。
必要な検査
疲労の原因を調べるため、内科では以下のような検査が行われます。
問診・診察
いつから疲れているか、睡眠の状況、食欲・体重の変化、ストレス状況、服用中の薬、既往歴、生活習慣などを詳しくうかがいます。
血液検査
疲労の精査では幅広い項目を調べます。
- 血算(貧血の有無)
- 肝機能・腎機能(AST・ALT・γ-GTP・クレアチニンなど)
- 血糖・HbA1c(糖尿病の評価)
- 脂質(コレステロール・中性脂肪)
- 甲状腺ホルモン(TSH・FT4)
- ビタミン・ミネラル(ビタミンB12・ビタミンD・鉄・フェリチンなど)
- 炎症反応(CRP)
- 必要に応じてホルモン検査
尿検査・心電図
腎機能・尿糖・たんぱくの確認、心臓のリズム異常の評価などを行います。
胸部レントゲン・CT検査
息切れ・動悸を伴う場合、心臓・肺の評価のために胸部画像検査が行われます。CTでは、レントゲンでは判別が難しい肺・心臓・大血管の状態を詳しく評価できます。
腹部エコー・CT検査
肝臓・腎臓・膵臓などの腹部臓器に異常がないかを調べます。原因不明の疲労が続く場合に有用です。
睡眠時無呼吸症候群の検査
いびき・日中の眠気がある方には、自宅で行える簡易検査や、必要に応じて精密検査(PSG検査)を行います。当院では簡易検査の手配が可能です。
治療方針
| 原因 | 主な治療 |
|---|---|
| 鉄欠乏性貧血 | 鉄剤の内服、食事指導 |
| 甲状腺機能異常 | ホルモン補充・調整薬 |
| 糖尿病 | 食事・運動指導、薬物療法 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | CPAP療法、生活指導 |
| ビタミン不足 | ビタミン補充、食事指導 |
| メンタル不調 | カウンセリング・専門医紹介・薬物療法 |
| 生活習慣由来 | 生活指導、栄養指導 |
検査で明らかな異常が見つからない場合でも、生活習慣の見直し・栄養補助・漢方薬の処方など、症状に応じた対応が可能です。
ご自宅でできる疲労対策
受診と並行して、以下のセルフケアも効果的です。
・睡眠の質を高める 就寝1時間前のスマホ・パソコンを控える、寝室を暗くする、就寝・起床時間を一定にする、就寝前のカフェイン・アルコールを避けるなど、睡眠環境を整えましょう。
・バランスのよい食事 たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)、野菜、発酵食品、鉄分・ビタミン・ミネラルを意識しましょう。朝食を抜かないことも重要です。
・適度な運動 意外かもしれませんが、慢性的な疲労には軽い運動が効果的です。ウォーキング・ストレッチ・ヨガなどを週に数回取り入れましょう。
・カフェイン・エナジードリンクの摂りすぎに注意 一時的に元気になっても、本質的な疲労回復にはつながりません。むしろ睡眠の質を悪化させ、悪循環になることがあります。
・仕事の合間の小休憩 1時間に1回、数分間立ち上がる・伸びをする・遠くを見るなどの小休憩で、疲労の蓄積を防ぎます。
・ストレスへの対処 信頼できる人に話す、趣味の時間を確保する、自然の中で過ごす時間を作るなど、ストレス対処も重要です。
「疲れているだけ」と思わずに相談を
働く世代の慢性疲労は、生活習慣の問題と片付けられがちです。しかし実際には、貧血・甲状腺の異常・糖尿病・睡眠時無呼吸症候群など、治療で改善できる病気が隠れていることが少なくありません。
「病院に行くほどではないかも」と感じている方こそ、一度血液検査などの基本的な評価を受けてみることをおすすめします。原因がはっきりするだけでも、安心感や対策につながります。