2026年6月18日
「健康診断の結果でAST・ALTが高いと言われた」「γ-GTPが基準値を超えていた」「お酒はそれほど飲まないのに、なぜ?」——肝機能の数値で要注意・要精密検査の判定を受け、戸惑った経験はありませんか?
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出にくいのが特徴です。健診の数値異常は、自覚症状のない段階で異常を知ることができる貴重なサインです。
健康診断の肝機能検査でわかること
健診で測定される代表的な肝機能の項目は以下の通りです。
| 項目 | 何を示すか | 高くなる主な原因 |
|---|---|---|
| AST(GOT) | 肝臓や心臓・筋肉の細胞が壊れると上昇 | 肝炎・脂肪肝・運動後など |
| ALT(GPT) | 肝臓の細胞が壊れると上昇(肝臓に比較的特異的) | 肝炎・脂肪肝など |
| γ-GTP | 胆道系の異常・アルコール性肝障害で上昇 | 飲酒・脂肪肝・胆道疾患 |
| ALP | 胆道系の異常で上昇 | 胆石・胆管炎など |
| 総ビリルビン | 肝臓・胆道の機能低下で上昇 | 肝炎・胆道閉塞など |
これらの数値が基準値を超えている場合、肝臓や胆道に何らかの異常が起きている可能性があります。
「お酒を飲まないのに肝機能が悪い」よくある原因
「お酒をほとんど飲まないのに肝機能が悪い」という方は、近年特に増えています。アルコール以外の主な原因をご紹介します。
1. 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD)
最も多い原因の一つです。肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態で、肥満・糖尿病・脂質異常症・運動不足などが背景にあります。日本人成人の約3割が脂肪肝とも言われています。
かつては「ただの脂肪肝なら問題ない」と考えられていましたが、現在ではその一部が**脂肪肝炎(NASH)**に進行し、肝硬変や肝がんに至ることが明らかになっています。
2. ウイルス性肝炎(B型・C型)
B型・C型肝炎ウイルスの感染による肝障害です。自覚症状がないまま慢性化し、肝硬変や肝がんに進行することがあります。過去に輸血歴がある方、感染リスクのある方は一度検査をしておくことが推奨されます。
3. 薬剤性肝障害
処方薬・市販薬・サプリメント・健康食品が原因で肝機能が悪化することがあります。鎮痛薬・抗生物質・漢方薬・プロテイン製品など、意外なものが原因になることもあります。
4. 自己免疫性肝疾患
自己免疫の異常により、自分の免疫が肝臓や胆管を攻撃してしまう病気です。比較的まれですが、原因不明の肝機能異常が続く場合に疑われます。
5. 胆石・胆道系の異常
胆石や胆管炎によって胆汁の流れが滞ると、γ-GTPやALPが上昇します。みぞおち〜右上腹部の痛みや、食後の不快感を伴うことがあります。
6. 一時的な要因
実は、健診直前の以下のような要因でも数値が変動することがあります。
- 健診前の激しい運動(AST・ALTが上昇)
- 食事の影響(中性脂肪・血糖の変動)
- 風邪などの感染症
- 睡眠不足・過労
そのため、軽度の異常であれば再検査で正常化することもあります。ただし「一時的なものだろう」と自己判断せず、医師の評価を受けることが大切です。
肝機能異常を放置するリスク
肝臓は予備能力が高く、ある程度のダメージでは症状が出ません。しかし、異常を放置すると以下のように進行する可能性があります。
脂肪肝 → 脂肪肝炎(NASH) → 肝線維化 → 肝硬変 → 肝がん
肝硬変まで進行すると、もとの正常な肝臓に戻すことは難しくなります。早期に発見し、生活習慣の改善や治療を始めることが何より大切です。
精密検査では何をするのか
健診で要精密検査の判定を受けた場合、医療機関では以下のような検査が行われます。
詳しい問診
飲酒量・服用中の薬・サプリメント・体重の変化・家族歴(肝疾患の有無)・既往歴などを詳しくうかがいます。
血液検査(再検・追加項目)
健診よりも詳しい肝機能検査、ウイルス性肝炎の検査(HBs抗原・HCV抗体)、自己免疫の検査、肝硬変の進行度を評価するための検査などを行います。
腹部エコー検査
肝臓の形・大きさ・脂肪沈着の程度・腫瘤の有無・胆嚢・胆管・膵臓などを観察します。被ばくがなく繰り返し受けられる検査で、肝機能異常の精査では最初に行われることが多い検査です。
腹部CT検査
エコーでは見えにくい部分まで詳しく評価できます。
- 肝臓全体の構造を立体的に評価したい
- 肝臓内に腫瘤(できもの)が疑われる
- 脂肪肝の程度を客観的に評価したい
- 胆道系の異常をより詳しく調べたい
このような場合、CT検査が有用です。CTは肝臓の細かい構造や血管の走行を立体的に映し出すことができ、エコーで発見された病変の詳しい評価にも役立ちます。
必要に応じて専門病院へ
慢性肝炎・肝硬変・肝腫瘍などが疑われる場合は、より高度な検査(MRI・肝生検など)や治療のため、専門病院をご紹介します。
肝機能を改善するためにできること
軽度〜中等度の肝機能異常、特に脂肪肝による場合は、生活習慣の改善で数値が改善することが多くあります。
食事の見直し
- 食べ過ぎを避け、適正なカロリーを意識する
- 糖質(特に清涼飲料水・菓子類)を控えめに
- 揚げ物・脂質の多い食事を減らす
- 野菜・きのこ・海藻を積極的に
- 良質なたんぱく質(魚・大豆製品・鶏むね肉など)を適量
運動
- ウォーキング・軽いジョギングなどの有酸素運動を週に150分程度
- 体重の5〜7%の減量で脂肪肝が改善することがわかっています
飲酒の調整
少量の飲酒でも肝機能に影響することがあります。週に2日以上の休肝日を設ける、飲む量を減らすなど、できる範囲から取り組みましょう。
サプリメント・薬の見直し
複数のサプリメントを摂取している方は、医師に相談しながら必要性を見直すことも大切です。
体重管理
急激なダイエットはかえって脂肪肝を悪化させることがあります。月に体重の2〜3%以内のゆるやかな減量が推奨されます。
こんな方は早めの受診を
以下に当てはまる方は、肝機能異常を放置せず早めに医療機関を受診しましょう。
- 健診で2年連続で肝機能の異常を指摘されている
- AST・ALTが100以上など明らかに高い値
- 肥満・糖尿病・脂質異常症を合併している
- ご家族に肝臓病・肝がんの方がいる
- だるさ・食欲不振・黄疸(肌や白目が黄色い)などの症状がある
- 飲酒量が多い、またはサプリメントを多種類摂取している
まとめ
- 肝臓は沈黙の臓器。健診の数値異常は貴重なサイン
- お酒以外でも脂肪肝・ウイルス性肝炎・薬剤性肝障害などで肝機能は悪化する
- 放置すると肝硬変・肝がんに進行する可能性がある
- 精密検査では血液検査・エコー・CTなどで詳しく評価
- 食事・運動・体重管理の見直しで改善できるケースも多い